株式会社建設システム
土木ICT業界の有名企業が実績と知見を活かし建築業界に施工管理アプリで参入
株式会社建設システム
代表取締役社長 重森 渉 氏
マーケティンググループ 取締役部長 東 秀貴 氏
土木業界で4万社以上のユーザーという、最大級のユーザーを持つソフトウェアメーカーの建設システム。同社は、昨年1月に総合型の建築業向け施工管理アプリ「PRODOUGU(プロドウグ)」をリリースし、本格的に建築業界に進出した。
同社の主力製品の「デキスパート」は、30種類のソフトから構成される土木工事の施工管理トータルソリューションシステム。発売から30年間のノウハウが集約されており、高い機能性やソフト間のスムーズな連携などによりユーザーからの信頼は高い。
その建設システムが開発したPRODOUGUは、写真管理や鉄筋・配筋検査などの機能を持つ施工現場の効率化ツールで、同社の実績を知る人なら気になる人も多いだろう。
今回、PRODOUGUの機能や特長をはじめ、建設システムの概要や建築業界に進出した想いなどについて、代表取締役社長の重森渉氏、マーケティンググループ 取締役部長の東秀貴氏から直接お話を伺った。
デキスパートへの信頼による土木業界での実績と評価
建設システムは土木業界で高いシェアと実績を誇る企業で、デキスパートシリーズを中心に30種以上の幅広いソフトウェアを展開。1988年に創業し、社員数は417名(2022年9月現在)、31期目に突入した歴史あるソフトウェアメーカーである。
建設システム 代表取締役 重森渉氏は「当社の製品は、特に施工管理での生産性向上や省人化で実績があり、大手や地場のゼネコンなど約4万社以上に導入されています。会社としては現場視点で製品開発を行うこと、ユーザー様の声を機能に反映する柔軟な姿勢を持ち、お客様から高い評価をいただいています」。
重森氏が“現場視点”を強調するとおり、同社への評価は実際の数字にも表れている。国内のゼネコンにおいて、2021年の売上高 上位50社中47社がデキスパートを導入しており、ソフトを全社統一して使用している企業はその47社中39社にも上る。実に大手ゼネコンの80%以上が同社の製品を全社的に使用しており、他メーカーの追随を許していないのが現状だという。
このように多くのユーザーから支持を集める建設システムは静岡・富士市で創業した。「現会長の栗田富夫が立ち上げた会社で、当初は出来形管理システムの開発からスタートしました。すでに先行する競合企業は存在したのですが、その当時から現場の声を元に開発を行っており、その機能が好評で多くの企業に導入してもらえたのです」と重森氏は振り返る。
土木工事の出来形は、設計値と施工したものが許容範囲内の値かどうかを表す規格値があり、各地域で異なるが、その全国のデータを網羅したというのが当時全国で初めて実装した機能だという。スタートアップ時から同社が現場の視点を大切にしていたことがわかるエピソードである。
それから30年が経過したデキスパートは、着実に進化を遂げ、現在では施工計画書や工程管理、情報化施工、出来形管理、工事写真管理など、建設の各工程での活用となり、現場の効率化と生産性の向上に貢献している。
豊富なラインナップとユーザーが安心して使用できる体制
「そのデキスパートシリーズの中で、「写真管理業務を担う『写管屋』も評判が高いソフトです。出来形管理との連携が非常にスムーズで、建築業界の方にもお薦めです」。そう語るのはマーケティンググループ 取締役部長 東秀貴氏だ。写管屋は、直観的な操作やスマホとの連携など、写真管理の業務が簡略化でき、素早く成果品を作成できる点、改ざん検知機能を持つ点などが特長である。
また、「写管屋の特長の1つの工事写真に電子小黒板を埋め込む機能は、国内では当社が、かなり初期の段階で先に機能として入れ込んでいました」と東氏。いまでは他社のソフトでもスタンダードな機能だが、実は建設システムが一早くして搭載していたのだという。
さらにデキスパートで特筆すべき点は“稼働台数無制限”という点だ。ソフトを1ライセンス購入すれば追加費用なしで担当者全員が使用可能となる。これにより複数人でのデータ共有が可能となり、ワークフローの大幅な効率化が図れる。1つの現場や支店に所属する20~30人全員が追加費用なしでデキスパートを使用でき、小規模な会社であれば全員で使えてしまうのは驚きだ。
そのほかにも、各測量機器と連携し丁張設置、施工段階のチェックなどの作業をワンマンで行えるICT施工現場端末アプリ「快測ナビ」などは、スマホに対応した製品でベテランでも使いやすい。もちろん同社はi-ConstructionやBIM/CIMに対応する製品のラインナップも充実しており、設計側への対応や施工段階での3Dデータの活用をバックアップするソフトとしてINNOSiTEシリーズが用意されている。
また、保守サービスもユーザーから評判だと重森氏は語る。「保守サービスの加入率が高く、さらに一度加入すると継続いただけるユーザー様は90%以上です。フリーダイヤルで相談できるため、操作で困った際は気軽に電話で何回か相談できる体制を取っています」。全国に7ヵ所のサポートを設置しているほか、営業所は19ヵ所あり、フォロー体制が整っている。東氏も「お客様が安心して製品を使用し、現場で本来の仕事をスムーズに進められるようにしています」と自信を見せる。
PRODOUGUの機能・特長と今後への展開に向けて
そして、その建設システムが建築業界向にリリースしたのが、施工管理アプリ「PRODOUGU(プロドウグ)」だ。
東氏は、「土木業界での実績を元に、建築業界の皆様のお役に立ちたいという想いから今回のリリースに至りました。あえて建築業界に打って出ることは、我々として一つのチャレンジでもありますが、ぜひ皆様に使用していただき、建築現場の作業効率を上げ、省人化をお手伝いできればと思います」と想いを語る。
PRODOUGUは、現場事務所のパソコンと工事現場のiPadをクラウドで繋げ、図面管理・閲覧、工事写真の撮影、配筋・仕上検査、各種帳票の出力まで行うことができる。「図面の持ち運びはもちろん、工事写真を撮影し、電子小黒板の利用が可能です。特に鉄筋・配筋の検査に対して専門的な機能を持っている点が特長で、検査の際には豆図を自動で配筋図一覧から一気に切り取れるようにしてあります」。
さらにPRODOUGUで撮影した写真を写管屋に取り込むことが可能なため、写真の整理も効率的に行える。もちろん前述のとおり、この写管屋は1ライセンスあれば、複数人で使える。PRODOUGUは新しい製品だが、建設システムの知見とノウハウが織り込まれており、サポート体制も整っているので、これから使用する人も安心できるだろう。なお、PRODOUGUはデキスパートとは異なり、販売形態はサブスクリプションのライセンス販売となっている。
そして、PRODOUGUは今後の展望としてデキスパートのように現場視点でより進化を遂げていく見込みだ。
東氏は、「エンジン部分をより高度なものに改良する計画です。既存の他社製品にも言えますが、この手のソフトはPDF図面や画像の取り扱いは得意な場合が多いですが、CADデータは苦手な場合が多いです。弊社はCAD図面そのものを扱えるようにする計画で、ゆくゆくはBIMデータもタブレットで現場に持ち運べることを目指します」と語る。同社は土木向けのSiTE-STRUCTUREという3Dデータ作成用の製品を持つため、すでに持っている自社技術を活用でき、今後の展開への期待は高い。PDF中心だった現場の図面管理をCADデータで管理できるようにし、将来的にAIなどもなども活用していきたいという。
重森氏は、「PRODOUGUを建築業界の方々に使っていただき、現場の皆様からぜひご意見をお伺いできれば幸いです。我々が目指すのは、建築の施工に特化したソフトです。デキスパートのようにラインナップを増やしていき、建築の中の生産工程の高品質化、高効率化にお役に立ちたいと思います」。土木業界での実績と豊富な知見を持つ建設システムは、建築業界に新たな風をもたらすだろう。
CORPORATE PROFILE
会社名 | 株式会社建設システム |
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設立 | 1988年 |
事業内容 | 建設業向け施工管理ソフトウェアの開発・販売 |
本社 | 静岡県富士市 |
代表者 | 代表取締役社長 重森 渉 |