事例レポート

鹿島建設株式会社 NYKシステムズ

レブロをソフトの中心とした総合調整によりOneモデルを維持し複数協力業者との連携を実現

鹿島建設株式会社
東京建築支店 プロダクト設計室 設備グループ 次長 上堀 真 氏

国内で数々のプロジェクトを手掛けるスーパーゼネコンの鹿島建設は、これまでBIMの活用実績を着実に積み重ねている。その中で鹿島建設 東京建築支店 プロダクト設計室では、現在これまでにない大規模プロジェクトでの設備BIMの利活用を進めているという。
これはオフィスを主体とした大型複合施設を建設するという大規模な再開発プロジェクト。物理的な問題だけでなく、多数の協力会社が関わることによる情報管理の複雑さなどが課題となる。
そこで同社は、NYKシステムズの建築設備3次元CAD「Rebro(以下、レブロ)」をメインソフトに据え、総合調整会議を実施。これにより大幅なフロントローディングや、施工図としてのBIMモデル作成を進めている。
今回、同プロジェクトのBIMの活用で指揮を執る、鹿島建設 東京建築支店 プロダクト設計室 設備グループ 次長 上堀真氏に概要から実際のBIMモデルの利活用などについてお伺いした。

大規模プロジェクトで作成する設備BIMの目的

現在、鹿島建設 東京建築支店 プロダクト設計室では、設計・施工一括案件の大型プロジェクトを多数抱えているが、その1つに、東京駅周辺での大規模再開発プロジェクトがある。これは延べ床面積約数10万m2複数用途の大型複合施設です。
「このような大規模プロジェクトでは、建築・構造・設備を合わせると設計者だけでも約30人以上になります。そこに顧客・協力会社など多数の人間が関わるため、扱う情報も膨大です。そのため問題解決に時間を要し、設計・施工フェーズでの混乱が想定されます。我々のミッションは設備BIMを用いた総合調整で施工フェーズに入る前に問題点を抽出し、事前解決に努めることです」と同社プロダクト設計室の上堀真氏。
実施設計を進めていく中で、上堀氏は設備BIMモデル作成の目的として「プロジェクトの情報一元化」「問題点の速やかな解決」「設計フェーズから施工フェーズへの効率的な引継ぎ」の3つを掲げて運用を行うことがポイントだと語る。

鹿島建設株式会社
東京建築支店 プロダクト設計室 設備グループ 次長 上堀 真 氏
問題点とその解決策

「現在レブロで作成しているBIMモデルは、イニシャルモデル(初期モデル)と呼ばれる設計初期段階のもので、躯体や平面プランへの影響を検証することが目的です。モデルはその後、設備の使い方を検証する”実行モデル“、最終的に施工性を検証する”詳細モデル”と移行していきます」。初期モデルは、上堀氏の所属するプロダクト設計室が作成を担当。ほかにも同部署はCDE(共通データ環境)の整備や、隔週で行う「BIM総合調整会議」の運営や調整なども担当する。

モデルの段階

なお、モデルを管理するBIMマネージャーは施工の知見をモデルに入れ込むために、設備施工グループが担当する。そして、BIMマネージャーのもと総合調整会議が行われ、設備モデルをブラッシュアップ。施工フェーズでは施工担当者と施工担当する協力会社にモデルが引き継がれ維持されるフローだ。このように施工図として使えるBIMモデルの作成を徹底に意識した体制となっている。
そして、同社での設備BIMの作成や管理には、NYKシステムズの建築設備3次元CAD「Rebro(以下、レブロ)」が威力を発揮している。「2012年に導入し、すでに10年以上使用しています。現在では設備BIMを行う際の推奨ソフトになっています」。

設備BIMモデルをOneモデルとして維持するポイント

今回の大規模プロジェクトのBIMモデルは、設備設計と施工の両段階でBOXを使用した鹿島専用クラウドに保管され共有される仕組みだ。現在、30~40人ほどの関係者が、それぞれ同時並行でレブロファイルを作成。それを隔週の総合調整会議で調整と修正を重ね統合図となる。

鉄骨スリーブ調整①
鉄骨スリーブ調整②

「BIMモデルを統合図とする際の最大のポイントは、レブロで作ったクラウド上にある生産設計モデルを常に最新の状態で維持することで、社内での管理を徹底しています」と上堀氏は強調する。つまり、Oneモデルで維持していくことが重要なのである。また、クラウド上のレブロファイルは、施設のエリア名などで分類され、ファイルの名前付けには協力会社のイニシャルを入れるなど明確にルール化されている。
「ファイルは同プロジェクトで約200以上にも及びます。これらをレブロの”外部参照の機能“を使用し、必要なファイルを読み込んで統合ファイルを作成するのです」。上堀氏は3Dモデルの画面を操作しながら「このように全体を合成して見ることができ、実際にはこの統合された状態を確認しながら総合調整会議を行う形です。今回約50フロアという大規模な施設のため、フロアごとに順次作成し調整します」。

実施例 調整前
実施例 調整後

このようにレブロを設備3次元CADというよりも施工図を描くためのエンジニアリングCADに近いイメージで使用しているのである。
「施工図にならないレブロモデルを作成しても仕方ありません。我々は基本的にはすべて施工図にするつもりでBIMモデルを作っています。言うなれば施工図を描くときの副産物としてモデルを作っているのです」と語り、明確な目的意識の元で進めていると説明する。
また、今回のような大規模プロジェクトでも正確に進んでいる総合調整やBIMモデル作成だが、これには以前経験した約10万㎡の大型施設の建設プロジェクトでの実績が糧になっているという。
当時上堀氏は、外部参照のレブロファイルは500以上、協力会社は12社を超える中で、総合調整会議を取りまとめて施工図を作成。最終的にBIMモデル自体の納品まで行っており、この経験から大規模プロジェクトでもスムーズな調整を実現しているのだ。

レブロが持つ特長とそのメリットで総合調整がよりスムーズに

上堀氏によると今回のプロジェクトでは、関係会社・協力会社は20社を超える想定だ。「これだけ関係する企業が多いと通常は混迷するのが目に見えています。ただし、いま総合調整をやっているおかげで、調整済みのレブロファイルを協力会社に渡すことができるため、各社担当するモデル部分を切り取って施工図にできますし、大幅なフロントローディングが見込めます」と自信を見せる。
そういった中で、設備BIMソフトとしてレブロの強みを「まず以前のプロジェクトの際も今回と同様に建築設計はRevit、設備設計や施工はレブロを使用しました。外部参照のデータなどの情報はかなり膨大でしたが、レブロの動きは比較的に軽いため総合調整会議などで扱いやすく助かりました」と上堀氏。
また、ほかにBIMモデル自体を作成しやすいというメリットも語る。「Revitからレブロ、レブロからRevitといった変換が可能です。そのため、設備から建築設計者へのモデル受け渡しもCDE上で容易に共存できるのが良いですね」。
また、特殊な部材も簡単に作れる点も特長に挙げ「3Dモデルを比較的簡易な操作で作成できるのは社内でも評判が高いです。この画面の部分は、建築部材でRevitからインポートされたデータなのですが、この構造の位置や壁の位置が違うということはありません」。つまりRevitからのエクスポートが正確に行われていて、データの互換性がかなり高いという。
さらにCGシーン登録、図面マーカー機能など関係者に追加や修正など情報を周知するために必要なコミュニケーションを図れる機能や、履歴を残せるなど総合調整を行う上で欠かせない機能が備わっていると語る。
「我々は、一番のポリシーとしてOneモデルということを徹底的に意識しています。この点を共通意識として持つことで、BIMモデルを通して会話ができてきていると感じます。そして、このやり方を今後全現場に同様に展開するとともに、BIMマネージャーもさらに育成していくことで、より現場の生産性向上を実現したいと考えています」。多岐にわたるプロジェクトで設備BIMの実績を積み重ねる鹿島建設。今後もレブロを使い、日本の建設業界をけん引することだろう。

CORPORATE PROFILE

会社名 鹿島建設株式会社
設立 1930年
事業内容 建設プロジェクトや都市開発等のプロジェクトに関する調査、研究、コンサルティングなど
本社 東京都港区
代表者 代表取締役社長 天野 裕正