株式会社フォトラクション
2024年問題の解決策を提示するとともに、建設テックを一つの大きな産業へ
株式会社フォトラクション
代表取締役CEO 中島 貴春 氏
2024年4月から時間外労働の上限規制が適用される建設業界。いわゆる2024年問題に対して多くの企業がその対応を進める中で、フォトラクションの建設業向けBPaaS「Photoruction」にさらなる注目が集まっている。BPaaSとは、Business Process as a Serviceの略でSaaSのテクノロジーレイヤーを包括しているものであり、クラウド経由でビジネスプロセスまで提供するサービス形態のことだ(図1)。同ソリューションには、「建設BPOサービス」が昨年より実装されているが、これは通常のBPOとは一線を画し、手軽かつ効果的に利用できるものだ。これらが利用者から好評を得ており、いま駆け込み需要的にユーザー数が増加しているという。
自社プロダクトをベースに、より高い生産性へと導くサービスを提供するフォトラクション。建設テックの発展を目指す同社の取り組みや今後のビジョンについて、代表取締役 CEO 中島貴春氏にお話を伺った。
2024年問題への対応でPhotoructionと建設BPOの導入が増加
「最近は、建設業界の方々から2024年問題への対応や関連した相談が急増しており、Photoructionのユーザー数もここ1年間でさらに増加しました。いまでは累計で約20万プロジェクト(2023年2月時点)で弊社のソリューションをご利用いただいています」と語るのは、フォトラクションの代表取締役 CEO 中島貴春氏である。
1年前と比較すると導入実績は10万プロジェクト以上も増加したという。中島氏はその背景に、建設業界のICT活用が次のステップに移行しつつあるためと分析する。「ゼネコンやサブコンの方たちは、以前からICTに関する何かしらの取り組みを進められています。その中で、多くの方々がアプリケーションをまずは使用するという段階から、一周回ってICT活用のさらに先を考えるフェーズになりました。そのことで、弊社のソリューションに価値を感じる方がこれまで以上に増えているのだと思います」。つまり、ICTを活用してより高い生産性を求める際に、その方策としてPhotoructionと建設BPOサービスを選択する企業が増えているのだ。
同社のオールインワンの建設生産支援クラウド「Photoruction」は、写真や図面などの情報を一元化し、建設現場の管理業務を大幅に効率化できるソリューション。そして、そのPhotoruction上で利用できるのが、「建設BPOサービス」である。
中島氏は、「ユーザー様の多くのがBPOサービスも利用するようになり、その効果を実感いただけています。また、弊社はこういった標準サービスのほかにBIMソフトなどとの連携サービスの開発や保守運用、共同研究などを行う体制も整えており、建設に特化しつつ幅広く業務を行っています」と語る。
建設BPOサービス導入による実際のメリットと相乗効果
中島氏は「弊社のBPOサービスは、Photoruction上のナビゲーション画面に表示される専用のオーダー画面から利用できます(図2)。ここに”配筋検査の作成“や、”施工計画書の作成”など、建設会社の方々が日々業務に活用しているBPOメニューが表示されます」。わかりやすいメニュー表示に加え、概要や動画での説明も用意されており、Apple Storeを利用するようなイメージで手軽に利用できる。
「当然、配筋検査の帳票や施工計画書を作る際は、書式なども含めて企業ごとに要望が異なります。そのため、Photoructionの画面からアンケート形式で回答・記入いただくことで内容は簡単にカスタマイズが可能です。画一的なサービスを提供するのではなく、それぞれのユーザーごとに対応したBPOサービスを提供するのが我々の特長です」と中島氏。ユーザーは図面をアップロードし、黒板を選択、そして、検査箇所は全数か個別なのかなどの質問に沿って答えていくという発注の流れだ。
一般的なBPOの場合、実際に人が常駐するという形が多い。そうすると教育係も必要になるため、逆に時間や手間が余計に掛かってしまう場合もある。「建設業に特化しているのが我々の強みです。ノウハウを活かし、多くのお客様が依頼するようなメニューを標準的に用意しているため、頼みたい部分だけ依頼できます。そして、弊社のBPOはPhotoruction上から利用するため、図面などのデータが連携しているとともに弊社開発の独自AIも活用しており、短納期かつ低価格を実現しています。仮に検査のBPOを依頼された場合、検査の下準備は我々が請け負うので、お客様は現場で検査していただくだけです」と中島氏。
ソフトの利用に掛かっている金額や進捗状況は画面上で常時確認できるほか、費用対効果もダッシュボードから把握が可能となっており、経営者や管理者側にとってありがたい機能も備わっている(図3)。
中島氏によると、事前準備やデスクワークの手間が大幅に削減できるため、あるユーザーは、6,660分要していた作業を、なんと20分にまで短縮できたという。
また、ユーザーがサービスを利用する中で、当初同社も想定してなかった相乗効果が出ている。「その1つが”標準化“です。あるユーザーさんは、全社的にBPOサービスを導入いただきました。その際に配筋検査ですと、これまで現場ごとに異なるやり方で進めていたのですが、BPOを利用することにより全現場で同じ方法を行うようになったのです」。つまり、事前準備も含めてプロセスを標準化でき、より生産性が高まったという。
「2つ目は”品質向上”です。現在は一部のお客様への対応なのですが、メニューをユーザーごとにカスタマイズ可能です。そのため、お客様はこれまでは考えていなかった作業や手順なども洗い出して考えるようになり、施工計画書の書式を社内で揃えるなど、建物を管理する部分をブラッシュアップできました」。当初は、生産性向上がサービスの主な目的だったが、標準化と品質向上も価値として提供できると中島氏。今後も対応できるBPOメニューは順次増やしていく計画だ。
福井コンピュータHDとの共創やデジタルゼネコンとしての未来
「ユーザーはBPOを使うことで、1人が15時間や20時間分働いたことと実質的に同じ成果を生むことができ、業務の生産性を飛躍的に向上させることが可能となります。我々が仕事を代行することで、現場の方は良い意味で楽ができます。2024年問題への対応だけでなく、ナレッジマネジメントや技術の継承に寄与できればと思っています」と中島氏。
そして、現在同社は「SaaS、AI-BPO、MSP(カスタマイズ)」を軸に、いわゆる大型の建造物を建てる事業者が各フェーズで使える建設プラットフォームを開発・提供していくビジョンを掲げる。「ゆくゆくは建設×テクノロジー、いわゆる建設テックを一つの大きな産業にしたいと中島氏は未来を描く。
「これらの大きな目標は、我々だけでは達成できません。さまざまな企業と一緒に取り組むことで実現に近づけるのです。その第一歩として、今回約17億円の増資発表とともに、福井コンピュータホールディングス様(以下、福井コンピュータHD)との共創を発表させていただきました」。福井コンピュータHDは、国産BIMソフト“GLOOBE”や3D建築CADシステム“ARCHITREND ZERO”を開発・販売する上場企業だ。
「両社が得意な各セグメントで統合プラットフォームを展開することで、より建設業界の生産性を向上でき、建設テック産業も盛り上げられると考えています」と中島氏(図4)。
さらに「今後フォトラクション自体は、建設会社の仕事の一部をデジタルで請け負うことで、ゼネコンなどが”ものづくり”という本来の仕事に一層集中できる環境を構築したいと思います。つまり、建設業界の方々をICTでサポートする”デジタルゼネコン”となり、品質と生産性を向上させることで建設業界で働く人々を幸せにしたいのです」。デジタルゼネコンという新しいスタイルの企業を目指すフォトラクション(図5)。今後もユーザーとともに未来へと歩みを進める。
CORPORATE PROFILE
会社名 | 株式会社フォトラクション |
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設立 | 2016年 |
事業内容 | 建設生産支援サービスの開発・提供 |
本社 | 東京都中央区 |
代表者 | 代表取締役CEO 中島 貴春 |