事例レポート

中南建築設計院(CSADI社) ダッソーシステムズ

スマート・コンストラクションによる遠大な気象観測所の建設

中南建築設計院(CSADI社)
会長 Li Ting 氏
エンジニアリング・デジタルR&Dセンター・ディレクター Zhang Shen 氏
シニアR&Dエンジニア Yang Hao 氏

生産性が課題である建築・建設業界において、イノベーションと効率のバランスを調整することは容易ではない。武漢の次世代気象レーダー観測所を設計および開発した中南建築設計院(CSADI社)ではBIMの枠組みを超えて、バーチャル・ツインにより、エンジニアリングおよび建設ノウハウを構想段階で組み込み、人、データ、ワークフローをシームレスに結び付けている。ツイン・タワーの気象観測所の設計および建設において、CSADI社はバリュー・チェーンのすべての分野を一元化して、着工前に、設計と施工の精度を高める、バーチャル・ツインの技術を使用して、同社のビジョンを実現している。

3Dの透明性とスピード

Li Ting氏(CSADI社会長)は、「都市建設におけるすべての要素を管理する、高度な技術企業への変革が当社のビジョンです。近年、中国の建築・建設業界は、EPC(設計、調達、建設)の当社はこのコンセプトを推進している。EPCでは、設計に基づいてゼネコンがすべての専門分野を統合します。建材製品とプロセスの設計を組み合わせることで、プロジェクト管理の真の統合が図られます」と述べている。
関係者を単一の環境内で結び付け、すべての要件を考慮しながら、情報が連携することがプロジェクトを成功させるために重要である。
Li Ting氏は、「非常に複雑な詳細な3Dモデルでゼネコンに共有しています。各専門分野のすべての関係者が同じモデルに取り組み、ライフサイクル全体にわたって単一のモデルを運用した初めてのプロジェクトでした」と語る。
Zhang Shen博士(CSADI社、エンジニアリング・デジタルR&Dセンター・ディレクター)は、このデータ・フローの連続性がもたらすメリットを「当社の主な目標は、プラットフォームを使用してデータ主導型の開発と単一のデータ・ソースによる作業を達成することです。これにより、設計、建設、運用、保守間でデータを効率的に結び付けて、実行されていることを正確に把握できます」と述べている。
Li Ting氏は、「3DEXPERIENCE Platformは、当社の固定概念を変革する、大きなきっかけとなっています。以前は2D CADを使用しており、孤立した作業環境で各分野が独自の図面を作成していました。このため設計ミスや不適切な優先順位付けが発生していましたが、リアルタイムな協業により、このような問題を解消しています」と語った。
Yang Hao氏は、「3DEXPERIENCE PlatformでENOVIA を使用して、給水/配管やHVACなど10以上の専門分野を組合わせて、各担当者に対して個別にアクセスを許可しています。プロジェクト・マネージャがプロセス全体をさらに明確にして、タスクを各分野のリーダーに割り当てています」と述べている。
この合理的かつ透明性の高いアプローチにより、CSADI社はミスを減らし、建設段階を以前よりもはるかに早期に完了している。
「前例のない設計効率を達成しています。モデルへの各自の更新をすべての関係者が同時に確認できるため、設計効率がおよそ30%向上しています。設計と施工計画を同じモデルを使って一元化することで、建設会社による誤った解釈や憶測による作業を避け、建設プロセスで生じるミスをおよそ60%減らしています。これにより、建設スケジュール全体をおよそ30%短縮しています」とZhang Shenは語る。

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    エンジニアリング・デジタルR&Dセンター・ディレクター Zhang Shen 氏
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    シニアR&Dエンジニア Yang Hao 氏
3DEXCITEによるフォトリアリスティックなグラフィックスを使用して、完成イメージの可視化(Image © CSADI)
建設の難易度およびコストを低減

プロジェクトは、通常とは異なるタワー形状である。このツイン・タワーのファサードには螺旋形状が採用されている。この高度な設計は、CATIAによる、デジタル処理によって最適化されている。これにより、建物の完璧な回転角度を特定し、1,000以上のガラス繊維強化コンクリート外壁パネルの形状と寸法を正確に計算して、建設の難易度とコストを低減している。
Zhang Shen氏は、「武漢の次世代気象レーダー観測所のプロジェクトでは、双曲線による非常に複雑なツイン・タワー形状が採用されています。CATIAにより、建物の螺旋形状に最適な18°の角度を特定できました」と述べている。
このような複雑な設計では、正確な3Dモデルにより、完成後の外観を建設会社に明確に説明することが非常に有益である。CSADI社は、建築、構造、機械、電気、配管、ファサードのエンジニアリングに対応するすべての専門分野に対して、CATIAを使用して詳細なパラメトリック・モデルを作成している。これにより、ジェネレーティブ構成と派生モデルの管理をサポートしている。
「当社は、建設会社と連携して、設計を微調整できるモデルにより、鉄筋、鉄骨構造、ファサード、施工手順のモデルを一元化された方法で組み込こんでいる。これにより、施工方法を明確に説明することができました」とZhang Shen氏は語る。

CATIAによる、建物の螺旋形状に最適な18°の角度特定(Image © CSADI)
着工前のシミュレーション

気候観測所の設計精度を高めて、仮想環境で建設をシミュレーションすることで、施工段階で生じる未確認要素が排除される。これにより、CSADI社は工期を短縮およびコストを節約している。
Zhang Shen氏は、「DELMIAにより、バーチャル・ツインを作成して、建設プロセスと自動化設備をシミュレーションしています。これにより、着工前にすべてをテストおよび検証およびすべての作業指示を明確にして、プロセスを確認しています」と述べている。
これらのシミュレーションは、施工中の作業員の安全確保にも重要な役割を果たす。
Yang Hao氏は、次のように説明している。「ファサードのコンポーネントを吊り上げて設置する順序をシミュレーションしています。これにより、プラットフォームを吊り下げる位置、障害物、風による影響の計算など、具体的なシナリオを考慮して、作業員による安全なファサード設置に最適な条件を特定できました」。

作業員の安全条件など、さまざまなテストに3DEXPERIENCEプラットフォームを活用(Image © CSADI)
スマートなデータ管理

CSADI社は、作成される膨大な量のデータを管理する方法を見い出す必要があり、3DEXPERIENCE PlatformでENOVIAを使用して、すべてのデータおよびナレッジのテンプレートを保存している。
Li Ting氏は、次のように述べている。「2Dエンジニアリング図面から3Dデジタル・モデルへの移行には、多くの作業が伴います。3Dモデルに組み込んで明確に可視化する必要がある、寸法、資材、コスト、プロセスなどの情報は膨大な量に上ります。これに対応するため、3DEXPERIENCE Platformで独自のモデルベース定義を作成しました。これにより、デジタル建設への移行を大きく加速させています」。
Yang Hao氏は、次のように補足している。「3DEXPERIENCE Platformにより、大量のナレッジをすでに蓄積しており、テンプレート・ライブラリも増え続けているため、新しいプロジェクトをより迅速に立ち上げることができます」。
すべての建設関連データを管理して明解なダッシュボードで表示できるNETVIBESもCSADI社にメリットをもたらしている。
Zhang Shen氏は、「NETVIBESにより、建設プロセス、建設進捗管理、建設品質管理データを組み合わせて効率的に調整しています。建設会社が必要なすべてのデータを3Dモデルのコンテキストで取り込むことができるため、スマート・コンストラクション・プロセスを開発し続けている当社にとって、今後大いに役立ちます」と語る。

建設現場において複数の関係者と即時に連携できます(Image © CSADI)

Zhang Shen氏は、次のように述べている。「今後は、同じ3Dデータ・モデルを使用して、最終的にはプリファブ工場の機械自動化を推進したいと考えています。これにより、大きな変革が建設業界全体にもたらされます」。
同社は将来を見据えながら、3DEXPERIENCE Platformによる、スマート・コンストラクションの機能強化を計画している。

CORPORATE PROFILE

会社名 中南建築設計院(CSADI社)
設立 1952年
事業内容 建設プロジェクトの全体的なプロセス技術および管理サービスの提供(建築設計、都市計画、公共エンジニアリング、BIM設計およびコンサルティング、環境保全技術設計、プロジェクト管理、一括請負など)
本社 中国湖北省武漢市
代表者 会長 Li Ting