株式会社テクトム
建築設計AIプラットフォーム Tektomeが導く建設業界の業務改善
株式会社テクトム
代表取締役社長 北村 尚紀 氏
テクトムは、生成AIを通じて建築設計データの加工、自動設計、品質チェックをサポートする建築設計AIプラットフォーム「Tektome」を開発・提供している。
代表取締役社長 北村尚紀氏は、2014年にインキュビットを起業した人物だ。インキュビットでは、最先端のIT技術を駆使し、業界のニッチなニーズを汲み、その業界に本当に必要な製品を作り続けることを目的に、これまで3社のスピンアウトやインキュベーションをしてきた。1社目は内視鏡外科手術をAIで支援するスタートアップ、2社目のOXは、道路やトンネル点検の自動化を目的に撮影した写真から自動的に“ひび”を見つけて劣化診断する技術を持ち、OX自体はすでに大手上場企業へ事業譲渡した。
そして、3社目がAI×建築設計という領域に特化し、建築業界の課題解決などで貢献するテクトムである。今回、同社の概要や強みをはじめ、建築設計AIプラットフォームTektomeの詳細について、代表取締役社長の北村尚紀氏にお話を伺った。
テクトムの会社概要と強みについて
テクトムの代表取締役社長である北村尚紀氏は、16歳からプログラミングを学び始め、17歳でエンジニアとして独立。その後、海外留学を経験し、帰国してから前述のインキュビットを設立し、いまに至るという経歴だ。
テクトムは、2020年に設立され、一級建築士やAIエンジニアなど、さまざまな分野の専門領域の社員で構成される。さらに、国籍も10ヵ国以上とグローバルで、国内外にいるメンバーで開発している。そのため、海外からの先進的な技術や情報を持つ点も強みだと北村氏は語る。
さて、北村氏は建築業界にAI技術でアプローチする経緯をこう語る。「建築業界では、施工コストのうち約14%が手戻りなどで無駄が発生しているとされています。そのうち約40%はデザインプロセスにおいて発生し、世界中の無駄な施工コストは計100兆円以上との試算です。そのため、当社がこれらの課題を解決して無駄をなくし、建築設計の品質向上や業務効率化したいと考えました」。
また、ナレッジの共有課題も解決したいと語る。「建築事業者の仕事の約10%が、ミスなどの修正対応に追われていると試算されています。皆さんご存じのとおり、この背景には建設業のICT導入が遅れや技術の継承に課題があり、それに伴って生産性の向上への取り組みが他業界に比べて遅れているのです」。北村氏は、全体的な課題とともに、現場における施工上の課題のほか、設計工程でもまだまだ改善の余地があると分析する。「一方でAIによるオートメーション化で影響を受ける可能性が高いのも建設業です。つまり、LLM(大規模言語モデル)の登場などによって、良い意味で大きなインパクトをAI技術で出せると考えており、当社のソリューションで設計者の役に立てると考えています」。
Tektomeの最新のコア技術とそのメリット
北村氏はこれらの課題を解決に導く同社のソリューションについて、「まずTektomeのコア技術として、建築設計に関する、さまざまなファイルの “非構造化データを構造化する”という点が最大のポイントです。これに加えて、“データの統合管理”、“AIによるデータ利用”をという3つのレイヤーを押さえて製品を開発しました」と北村氏。
データ構造化の技術とは、写真や図面などのこれまで整理がしにくく、統計的な処理が難しい非構造化データを、統計処理や検索などができる整理された情報として活用ができるようすることである。「一般的に私たちが持つデータは、80%がダークデータと言われる非構造化データで、この部分をきちんと使えるようするのが、当社のTektomeです」と北村氏。
Tektomeでは、日本語で指示を出すだけで、非構造化データを構造化できる。「例えば、建物図面から多様な情報を抽出するには綺麗な構造化データの構築が必要です。データを手打ちで構造化する担当者を10人ほど雇っているケースもありますが、私達の技術ではその部分を自動化できます」と説明する。
そしてTektomeに「敷地面積について教えて」と人に依頼する感覚で指示を出すと、フォーマットが異なってもAIがバラバラの大量のデータから綺麗に整理されたデータを作成するという形だ。建築ではBIMやCADのデータ、平面図や系統図などの2D図面があるが、どのデータでも利用可能である。
そのほか、AIでの言語的な操作も特長で、”6階に物販店舗がある物件を出して”という言語指示でシステムやデータ検索を実行でき、誰もが使えるシステムになっている。
Tektomeのプラットフォームが持つさらなる機能
前述の技術から過去のデータを綺麗に整理しアクセスできるのが、Tektomeの技術のコアだが、プラットフォーム上では2つのアプリケーションを提供している。
1つ目が建築設計の図面管理プラットフォームの「Tektome ストレージ」だ。これは「大量に存在する過去の設計図面や写真などは、非構造化データのため、通常、PCで検索しても目的のデータを見つけられません。そのため、例えば若手が先輩やベテラン社員に直接聞いて確認するなど、時間を要していたと思います。そこでTektomeストレージを使用すれば、検索が容易になり、時間も節約できます。そして、人材育成の遅れや人手不足、業務の非効率化、品質の低下などの問題も改善可能なのです」と北村氏。
また、熟練の技術者の過去20~30年のノウハウを構造化データすることで、若手や新人がデータに手軽にアクセスして学びやすい環境作りも実現できると説明する。「例えば、事前に構造化データとして図面名称や図面番号がタグ付けしておくことで、平面図を探したいときに“平面”という項目を選択すると、大量のデータの中から、全プロジェクトの平面図のみを出してくれます。さらに、”敷地面積が1万平米以上、2020年以降の竣工、東京でのプロジェクトでの平面図”という複合的な検索もできます。さらにOCR(光学的文字認識)も用いており、“トイレ”と打つと平面図の中でトイレがあるところを探すことができます」。このキーワード検索はトイレに加え、WCや便所というワードでも検索できる点も驚きだ。
そして、2つ目はPDFから情報を抽出して自動的に変換する「Tektome PDF解析・変換」。北村氏は、現在の課題として、「ゼネコンや設計事務所の方は、協力会社の方から送られてくるPDFの書類や図面を手動で入力したり、目視で比較してチェックするなどを行っており、時間の浪費と入力ミスが起こると相談が多々あります。そのため、PDF解析変換ツールは、PDFをアップロードし、例えば日本語で「図面内の仕様の表をエクセルで出力するように」と指示を出すと、ExcelやCSVの形で変換されて、整理されたデータとしてすぐ使うことができるのです」と説明する。部材表や仕様書、指示書の内容を、自社のフォーマットに手作業で入力するという業務や、見積書の比較で年間に膨大な時間を割いている場合など、その点をシンプルに効率化か可能だという。
さらに北村氏によると、建築設計に関する複数のプロダクトのリリースを年内に予定しており、将来的にも個別のユースケースに特化した複数プロダクトを順次リリースして行くとのことだ。
そして、今後の展望について北村氏は、「私たちの強みは、最先端の技術を取り入れた形でのプロダクトを開発し、さらに使いやすいサービスとしてお客様に提供することです。ぜひ使っていただきたいと思います」と語る。
CORPORATE PROFILE
会社名 | 株式会社テクトム |
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設立 | 2020年 |
事業内容 | 建築設計AIプラットフォーム「Tektome」の提供 |
本社 | 東京都渋谷区 |
代表者 | 代表取締役社長 北村 尚紀 |